在米日本人インタビュー:仮想通貨ファンドのQuantsを経て、Meta社でエンジニアとして働く
- 小市民
- 2024年8月3日
- 読了時間: 7分

自己紹介をお願いします
ニューヨーク在住。現在はMeta社でソフトウェアエンジニアとして仕事をしている。スマートグラスに搭載する、AIアシスタントの開発をするチームに所属。
転職前はQuant Traderとして働いていた。プログラミングを使ってモデルを作り、市場予測・自動取引をする仕事をしていた。
アメリカに来る前の経歴について、教えて下さい
京大の修士を卒業後、渡米。父親のアメリカ留学中に産まれたため、アメリカ国籍を持っている。
京大在学中にアルパカというFintechで学生中にインターンして、アメリカ人と働き、仕事関連の情報を目にする機会があった。飛び抜けて優秀なわけでもない人が15万ドル、20万ドルといった報酬を得ていて、自分でもいけると思ったのがアメリカでのキャリア考えたきっかけ。
新卒時には三菱UFJモルガン・スタンレー証券のクオンツのオファーも持っていたが、アメリカでの仕事を探した。ニューヨークの従業員数30−40人ぐらいのFintechで仕事を得たのが最初の仕事。
アメリカでトレーディングの仕事を探した結果、仮想通貨のトレーディングを得て、ベイエリアに移った。コロナ中は日本で一人でトレーディングをしていた時期もあるが、シカゴで仕事を得てアメリカに戻った。その後、現在のAIエンジニアの職を得て、ニューヨークに来た。
ヘッジファンドは参入障壁が高い業界だが、仮想通貨のトレーディングは若くても関連経験があれば入社できた。シカゴの会社では当初仮想通貨をトレードしていたが、FTXの問題が出てきて以降は、CMEとかEUREXで取引される先物を扱っていた。CMEはアメリカの取引所で、金やETF等、先物全般。EUREXは欧州の、ドイツのIndexや債券が原資産。株式は特徴が異なるので、あまり扱っていなかった。
アメリカに来る前の海外経験はどのぐらいか
アメリカに来る前はほぼゼロ。インターン時に、1ヶ月シリコンバレーを経験したのが唯一の海外経験。
大学院生の時に中国人女性と交際していて、英語で会話していたのが役立った。
今現在はどんな仕事をしているか
キャリアの根幹にあるのは、機械学習とデータサイエンス。大学で勉強した数学と物理を使える仕事をしたいと思い、キャリアを歩んできた
画像・動画・言語といったインプットを処理して、何らかのアウトプットをAIが返す、AIアシスタントを作っている。データのクリーニングやモデルのアップデートをしている。
AIを搭載するのはサングラスなので、画像や動画もインプットとなる。
現地で仕事を得るうえで、どんな苦労があったか
英語が一番の障壁になった。彼女と英語で話すのと、面接で話す内容はレベル感が違う。面接相手は自分のアクセントにも慣れていない。自信を持って自己PRが難しかったので、沢山練習した。
Angel Listという、Tech中心のスタートアップ中心に募集かけているサイトで仕事を探した。LinkedInみたいな一般的なサイトは、アメリカでの学歴・職歴が無いと厳しいと思った。
新卒の時は、とにかく数を打つことを意識した。まずアメリカで仕事を得て、良い経験が出来ればステップアップしていけると思った。
エンジニアは特に顕著だが、アメリカ人は仕事をどんどん変えるので、日本とは転職について感覚が異なる。社名以上に、スキルが付けばステップアップしていける。
仕事の面白いと思う部分はどんなところか
今の仕事は、福利厚生が良いことが一番気に入っている。
以前まではトレーディングをしており、自分に合う仕事だと思っていた。トレーディングのアイディアを考えると、その結果が数字に跳ね返ってくる。ビデオゲームでハイスコアを目指すような感覚で働いていた。
トレーディングの会社は組織がフラットだったのも良かった。トレーダー・ポートフォリオマネージャー・プレジデントと、3階層ぐらい。20年ぐらい業界にいる人もタイトルは同じだったりして、気を遣わずに仕事ができる。
悪いところは急に人がいなくなることも多く、Job securityはプレッシャーになっていた。
日本と比較して、仕事についてどの様に感じているか
給料が違う。
給料以外だと、転職市場の活発さが異なる。若いエンジニアは転職を通じて給料を上げる。同じ会社で昇格するのは時間がかかるので、新しい会社でポジションを見つけ、給料を上げていくのがよくあるパターン。
転職のために勉強も必要なので、負担にはなる。アメリカ人は仕事をしないと思っている日本人もいるが、休日に仕事をしている人も結構いる。
なんでアメリカに来ようと思ったのか
上述の、インターンの時にアメリカ人と働く機会があり、日本との給料とのギャップに気づいたのが原体験。
日本で高い給料を得ようと思ったら、外銀かコンサルになるが、自分は技術に携わりながら良い給与を得る仕事がしたかった。
日本で働きたくない理由はあるか
給料と仕事を除けば、日本のほうが住みやすいので、日本で働きたい気持ちはある。
アメリカにはどんなビザで来たのか
アメリカ国籍があったのでビザの苦労は無かった。自分は嫌だったら仕事を辞めるという選択肢があるが、他の国の出身者を見ると、仕事が嫌でもビザの為に残らざるを得ない人も目にする。
アメリカで働く中で、どんな苦労を経験したか
言語の壁が大きい。英語は上達したが、未だに飲み会で周りが皆話していて、何言っているかわからず、作り笑いをすることもある。周囲はスタンドアップコメディ等、自分があまり見ないコンテンツを見ている。カルチャー面でのギャップが大きく、雑談が難しい。
アメリカの保険の仕組みが面倒等生活面での不便もあるが、それはやれば良いだけの話なので、大きな苦労とは思わない。
アメリカで住む場所について
ベイエリアはあまり好きではない。コストが高いのに田舎だと思う。住んでいた時には自分が若かったこともあり、つまらなかった。若い人で、選択肢があるならベイエリアはおすすめしない。
自分が気に入ったのはNYとシカゴ。シカゴはコストが高くない割に都会。NYは高いけど街の規模が大きい。総合的に考えるとシカゴが良い。シカゴは冬があまりに寒いのがネックにはなる。
今後どの様なキャリアにしたいと思っているのか
直近、AIのエンジニアに転じたのは、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)といった技術のアップデートをしたいと思ったのが理由。面白ければ今の仕事を続けて、AIでプロダクトを作っていきたい。もしそれが合わなければ、LLMを使ってトレードに戻ることにも関心がある。ニュースを読んでトレーディングする人は沢山いる。LLMを活用して、投資戦略を作る仕事は面白そう。
一回ぐらい、事業をやってみたいとは思う。Metaで出世したら、生活できるだけのお金は貯まるので、一度リスクをとるのもありだと思う。
住む場所は日本みたいな食事が美味しいところが良い。若いうちは仕事を頑張りたいのでしばらくはアメリカに残るつもり。
アメリカで働く上で、考え方が変わったことがもしあれば
元々給料に惹かれてアメリカに来たが、どれだけ給料上がっても勝てない金持ちがいると、ベイエリアにいる時に認識した。年収1,000万円とか2,000万円とかで小競り合いしても仕方ない。お金は生活の為に必要だから仕事は頑張るが、金銭面だけに固執せずに自分がやりたいことをやるべき
しんどいことがあっても、手を止めなければどこかには着地する。仕事でクビ切られた時や、仮想通貨で全財産吹き飛ばしかけた時は参ったが、なんとかやってこれた。まだ子供もいないので、引き続きリスクをとっていきたい。
その他一言あれば
仕事で自分がイライラするのは一番良い時。問題をSolveしようと思ってもがいている状態で、時が経てば形になってくる。まあこれで良いか、とルンルンな気持ちで仕事をしていると必ず痛い目に遭う。大きなバグが見つかって、損失を出すとか。
FTXショックが起きた時、自分はハネムーン中。毎時間自分の資産が減っていくのを見て、どうしようかと思った。
トップ画像はAdobe Fireflyにて「仮想通貨 Quants ファンド」で生成
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